東京高等裁判所 昭和42年(行ケ)104号 判決 1968年9月19日
原告
望月福雄
代理人弁理士
秋本正実
被告
株式会社トミ商会
代理人弁理士
南一清
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実《省略》
理由
<前略>
(審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告は、第一に、本件特許発明にかかる炭酸水の製造方法(編注・本件特許発明の要旨 密閉タンク中に水とドライアイスとを封入し、ドライアイスが水にふれることによる気化熱により水を冷却すると共に該気化瓦斯を水中に溶解せしめるようにしたことを特徴とする炭酸水の製造法。)と引用例記載のものにおける炭酸水製造の方法との間には重要な相違点がある旨主張するが、その相違点について具体的な主張をせず、<証拠>によると、引用例記載のものは、炭酸水製造装置であるが、その実用新案の性質、作用及び効果の要領の項の記載を添付図面と対照して検討するときは、密閉槽(8’)内に固形炭酸容器(2’)を備え、該容器内に固形炭酸を収容した籠(7’)を設け、槽内に水を入れ、螺桿により右容器とその底との間に間隙を生ぜしめるようにして槽を転覆させると、水の一部は右容器内に浸入して容器内の温度を上昇させるとともに、固形炭酸の気化を促し、以て気化せる炭酸をして水中を通過して水に溶解せしめて水の温度を降下させるべき旨、実用新案にかかる炭酸水製造装置の構造の説明に合わせて、その装置を使用して炭酸水を製造する方法が開示されていることが認められ、これと本件特許発明の要旨とを対比してみると、両者は全く一致するものであることが明らかである。この点に関する本件審決の判断は正当である。
次に、原告は、本件特許について訂正審判の請求をしたことに基づいて、本件審決の違法事由を主張するが、原告のいうところは、すべて訂正許可の審決が確定したことを前提とするものであつて、いまだその確定をみないことの明らかな本件あつては、採るに値しないものである。
(むすび)
三 以上のとおりであるから、本件審決に原告主張のような違法事由があることを理由にその取消を求める本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。<後略>(服部高顕 三宅正雄 石沢健)